警報翌日の園外保育 & 暑さについて

  • 2019.09.16 Monday
  • 14:14

マーちゃん先生、けい先生、tiny先生からのお尋ねです。たっきー先生、「ありがとう」コメント、ありがとうございます! これで、8月24日まで追いつきました。台風がらみのご質問が多いことに今、気づいたので、速攻、お返事を書きます! まずは下にもリンクを貼ってありますが、8−3(後半の加筆部分)、それに付随する8−1をお読みくださいませ〜。

 

まずは、マーちゃん先生からです。すごく遅くなってしまってごめんなさい! 

 

ーーお尋ねの要点は以下の通りですーー

 夏休み、年長児が園外施設に行き、山登りや沢登りをする。今年は前夜が大雨警報、土砂災害警戒情報、市内は避難勧告。でも、翌朝の天気予報は晴れで、実際に快晴。その施設からは「朝の時点で警報が出ていなければ大丈夫、朝の判断」と言われた。
 その翌日に合宿に連れていったのは、正解だったのか? 園の判断基準の一つに、「中止にしたら保護者からクレームが来る!」という点があり、その判断基準はおかしいと(掛札の講義から私は)確信していた。
 もちろん、沢登りも山歩きも変更して最低限の危険は施設の職員さんと相談して避けたが、結果オーライでよかったものなのか。

 

ーーお答えですーー

1)今回に関しては、施設側が「朝の時点で警報が出ていなければ大丈夫」と言った(=責任の一端を背負った)ので、まあ、それは良しとするべきかと。施設側が「ダメ」と言ったら、園も中止するでしょうし…(しないかな?? いや、すると思いたい…)。あ、施設側が「大丈夫」と言った、その記録は絶対に残しておくべきです。あとで「そんなこと、言ってません」と言われかねないので。

 

2)とはいえ、ここ数年の雨は過去のものとは違いますので、警戒情報が出ていなくても、増水や土砂崩れが起こるリスクはゼロではありません。川遊びをしなければ増水は関係ないかもしれませんが、土砂崩れはわかりません。

 

3)1も2も、最終的な判断基準にはなりませんね…。では、どうするか。鍵になるのは「中止にしたら保護者からクレームが来る!」という部分です。その通りです、わかります。でも、ここで重要なのは、常にこの逆を考えなければいけないという点です。ちょうど「8−3」を加筆したので、そこにもまたちょっと書き足しますが、これはすでに「1−2」の例5(最近加筆分)にも書いた内容です。人間は自分が責められたり、批判されたりするのがいやなのですが、その逆にいる「自分(たち)に同意する人たち」の存在は忘れがちです。
 つまり、保護者の中には、愛媛県西条市で起きた死亡事故のようなことを知っていて、「昨日があんなだったのに、川に行くんだ。心配…」という人がいるはずなのです。この人たちは当然、「きっと大丈夫だろう」という感情も持っているので、事前にわざわざ「今日、本当に行くんですか?」とは言わないでしょう(ただし、重大事故が起きたら、「心配」と思わなかった人たちも一緒になって「危ないと思っていた!」と言うはずです)。この「心配している保護者たち」を無視することはきわめて危険です。
 ですから、前日の段階で「施設はこのように言っており、晴れの予報ですから実施の予定でいますが、心配な親御さんのお子さんは園で過ごします。(お弁当はお持ちください。)」と掲示と一斉メールで伝えておくべきでしょう。もちろん、「右へならえ」のこの文化ですから、心配だと思っていても「うちの子は行かせません」と言う保護者は少ない(いない)でしょう。でも、「選択肢を出して、選んでもらった」ということにはなり、保護者も「園におまかせ」の態度を減らしていくかもしれません。
 発熱や体調不良であれ、災害であれ、保護者が自分で決められないのでは…です。保護者はいろいろな考えと要求を持っています。園にできることは、「できること」「できないこと」「すること」「しないこと」をきっちり切り分け、保護者に伝え、選択肢の範囲内で保護者に選ばせること、です。

 同じことは、暑い時期の「屋外活動カード」についても言えることです。「園の暑さ基準は緩すぎる、うちの子は出してほしくない」という保護者はいるのですから、その声を無視するのは危険です。
 いかがでしょうか。

 

ーーーー

 続いて、tiny先生とけい先生、コメント、ありがとうございます。お2人の内容がかなり似ていて、混ぜるとプライバシーの保護のためにも良さそうなので、まとめて。どの内容がどちらの先生に向けて書いていることかは、ご本人にはおわかりになると思います。

 

 はい、どこの園も「暑さ」や「危なさの判断」をめぐっては、いつもいつも大変です…。

 先生たちの園は暑さ指数が「危険」でなければいいということになったのですね。指数計をコンクリの日向に出して「暑くなりすぎるから」はないですよ。だって、それが子どもたちが感じている現実なのですから。まあ、それを言っても無理ですね、「とにかく外へ出すことが大事」と思っている先生たちには。しかし、指数計をしまい込んで、その場所の値を使うというのは…、いやはや。その先生はリスクの深刻さを理解していないとかではなくて、それ以前です。都合の悪いことは見ないようにする、見えないようにする、というのでは「他人の子どもの命を仕事として預かるプロ」として失格ですよね。

 

 「1−1.気づき」にもチラッと書きましたが、人のリスク感覚はまったく違います。楽観バイアス(「私(たち)には悪いことは起きない」と感じる認知の歪み)の程度も、人によってまったく違います。何を危ないと思い、何を大丈夫と感じるかは、人によって違うのです。それは重要な多様性であり、たとえば特に、「なんでもさせてあげよう!」という保育士さんの仕事においては楽観バイアスがある程度、強いというのは価値でもあるのです。一方、看護師さんたちの場合、個人の楽観バイアスの程度とは別に、職業上(医療現場で働いたことがあれば)、「命の危険がある」という予測は持ちやすいのです(看護師や医師以外で、「これは死ぬかも」と平静に考えられる人はなかなかいません。看護師さんの価値については、拙著『子どもの命の守り方』に書きました)。

 

 自分のクラスはある程度、「外へ出す」「出さない」を決められても、他のクラスには口出しできないと思います。力関係もありますから。でも、一応、「こういうことだとは思います」と伝えて(うちのサイトでもなんでも)、「それでも外へ出すなら、私にはどうしようもない」と線引きするしかありません。「こういうことだと思いますから、私のクラスはこうします」と伝えておかないと、もし万が一、他のクラスで重大なことが起きた時に「言っておけばよかった」というよけいな後悔が生まれるからです。もちろん、言っておいても後悔はすると思いますが、言っておかないよりは良いと思います。

 

 保護者のリスク意識も楽観バイアスも、人によってまったく違います。上の答えにも書きましたが、心配している先生たちと同じように感じている保護者もいるのだということは、しっかり頭に入れておきましょう。人間は文句を言われるのがいやなので、文句を言ってくる人(たいていは、「外遊びさせて」「災害でも預かって」の側)の利益に傾いてしまいます。でも、実際には「遊ばせないほうがいいですよね」「私も仕事を休みにして、子どもと家で過ごしますね」という保護者もいる、そちらとしっかり手をつないでいきましょう。

 

 私の悲観的すぎる予測だという希望を持って書いておきますが、来年が昨年の夏のように長期にわたって暑かったら、東京オリンピックではかなり大変なことが起きるでしょう(なんだかんだ言って、今年の夏は、8月しか暑くなかったのです)。そうなったら、この社会もさすがに「学ぶ」のかもしれません。

コメント
プライバシーにも配慮してお答えいただきありがとうございました。
言わないで後悔するより、言い続けていくしかないなと改めて強く思いました。
「他人の子どもの命を仕事として預かるプロ」私自身もしっかり自覚していきます。
暑さだけではなく、他の安全面やコミュニケーションについても気になる事がたくさんある現状です…。またご相談させてください。
  • tiny
  • 2019/09/21 1:54 PM
tiny先生、はい、いつでもどうぞ! どんなことでも「言っておけばよかった」よりは「言ったのに…」のほうが、まだマシです。それは長時間保育の問題でもなんでも同じですから、私たちも今年、実験、頑張ってます (^^) 自分がつぶれない程度に、ボチボチ参りましょう。「私がこんなに言っているのに、どうしてわからない!」になると、上から目線になってしまうから、それだけは避けましょうね〜。自分の心にとって不健康です、上から目線は。
  • かけふだいつみ
  • 2019/09/23 7:10 PM
管理者の承認待ちコメントです。
  • -
  • 2019/09/25 4:02 PM
「私がこんなに言ってるのに、どうしてわからない!」になると、上から目線になってしまうので、それだけは避けましょうね~。心にとって不健康~掛札先生、言葉にして教えてくださって、ありがとうございます!

 疲れて余裕がなくなっていてたり、あっちもこっちもになったりすると、そんな気持ちが心に湧いて...でも表には出さないで仕事をするから、心にとって不健康。全くその通りです。あ~もっともっと広い心でいたいです。
  • 保育園Ns.
  • 2019/10/01 1:39 AM
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