プール、暑さの質問2つ
- 2019.04.28 Sunday
- 14:14
連休が始まりました〜。先生たちも少しはお休みくださいね。
まずは、ふみこ先生から。
園で研修内容の報告をした中で、プール活動を行う時の外気温について質問がありました。当園では、園庭の外気温が35度以上でもプールの上に日除けが設置してあるため35度以下になっていることがあります。子どもたちには直射日光はあたりません。その場合は、どちらの気温で考えたらいいでしょうか?
そして、ミミ先生から。
園でもプール活動をどう考えるか話し合っています。その中で、「夏ならではの活動だから」「小学校はプールがあるので、経験させないと」「命を守るための経験として水に慣れるためにも必要(小学校では着衣水泳をしている)」という意見が出ています。これらの意見を私は理解できないのですが、うまく反論出来ないでいます。
ふみこ先生に。
8−2の「外遊び、屋外活動の基準は?」以降に書いた通り、自分の園で明確に決めてください。どちらでもかまいません。両方をそれぞれに使ってもかまいません。とにかく決めて、それを守り、保護者にも伝えるということです。ただし、私は「35度」を判断の値にするというのは、あまりに高すぎると思いますが。8−2に書いた通り、私は「気温に5度足した温度が、子どもの気温」というのが一番簡単だと思います。よって気温35度は40度です。
もちろん、それでいいと決めるなら、それでかまわないかもしれません。保護者には「高すぎる」と思う人もいるでしょうから、これまた8−2に書いた通り、「暑さカード」を作って「うちの子は入れないで」「出さないで」を言えるようにするべきです。
逆に「とにかく外に出して」「プールに入れて」という保護者もいます。でも、その保護者の子どもたちに万が一のことがあったら? 「え、さすがに今日は出さない(プールに入れない)と思ってた」と言われます(人間の「後付けバイアス hindsight bias)です。だから、「出して」「プールをして」という保護者にも「あなたが許可した」という証拠をもらっておく必要があるのです、暑さカードで。
ミミ先生に。
「夏ならでは」…はい。8−2の「暑さに人間は慣れていくのでは?」に書きましたが、アラビア半島の国では1年中、冷房を切りません。40度、50度で「暑さならでは」の活動を外でする人などいないのです。「夏」というものが変わりつつあるのです。今までの「夏」は6月や10月になるかもしれません。ですから、皆さんで8−2をお読みいただき、「夏」の定義を考え直してくださいとお伝えください。
「小学校にはプールがあるので」…、昨年も、暑さのためにプールをやめた小学校が日本じゅうにあります。水のリスクや老朽化から学校でプール自体することをやめている自治体もあります。ミミ先生の自治体はそうではないのでしょう…。では、教育委員会、小学校は、「保育園、幼稚園で必ずプール活動をしてください」と言っているでしょうか。言っているなら、「小学校のために」という先生方のご意見は正当化されますし、プールで万が一のことが起きた時の責任の一端は教育委員会にもあることになります。教育委員会、小学校が「必ずしてください」と言っていないなら、保育園側が忖度(そんたく)してリスクを冒す必要はない、と考えることができます。
「命を守るため」…保育園のプール活動は「泳ぎを教えるため」ではないと思いますから、「水に慣れる」という意味では水遊びでも、家庭で風呂に入ることでも、なんでも一緒です。プール活動はそのひとつにすぎません。そして、大事なポイントですが、水で死ぬのは「泳げない人」ではないということ。さらに、着衣水泳は特別な泳法ですから、水に慣れていさえすれば問題ありませんし、着衣水泳をできているからといって水に落ちた時に死なないわけではありません。
…と、まあ、論理的にはこの通りなのですが、要するに先生たちは「プール活動をやめたくない」わけです。ミミ先生のお立場がどのようなものかわかりませんが、あとはミミ先生が「ごめんなさい、私は絶対に自信がありませんので監視はできません」と言うしかないでしょうね。事故が起きた時には監視者の責任になりますから、「できない」「責任をとれない」人に監視をさせてはいけないので。それは4−4に書いてあります。
2つのお尋ねをいただいてつくづく思うのですが…。人間は楽観バイアスの生き物ですから「うちでは熱中症死もプール死も起きない」と思うわけです。一方、人間はとにかく「これまでしてきたことを変えるのが大嫌い!」(現状維持バイアス、status quo bias)。
でも、断言します。あと2〜3人、保育園、こども園、幼稚園でプール死亡が起きたら、あと2〜3人、保育園、こども園、幼稚園で熱中症死が起きたら、状況は突然変わるでしょう。この文化は、なにかあったら突然「右にならえ」なので(これはこれで大問題な文化)。プール死亡、熱中症死が起きる園が、私が知っている園、私がうかがったことのある自治体の園でないことを祈るばかりです。事故は確率的な事象なので、いつどこで誰に起こるかわかりません。でも、プールをやめればプール死亡という、園にとっても監視をしていた先生にとっても大きな責任になるできごとのリスクはゼロになります。そして、暑い日に外へ出さなければ、プールをしなければ、基本、熱中症死は起きません。睡眠中の異常や食事中の誤嚥よりも、予防はずっと容易なのです。「とてもじゃないけど、命の責任はとれない」、その気持ちのほうが「遊ばせたい」「プールをさせたい」より大きくなってくださいますように。
命が失われてからでは遅いから、反感を買おうが嫌味を言われようが、危険に気づいた人間がストップをかけないとなんだなと気持ちが引き締まりました。現状維持バイアス、多分自分の中にもあると思うので、意識して流されないようにしたいです。先生のブログでは、いつもたくさんの事を教えていただきありがとうございます。