「とにかくケガをさせるな」と言われる…

  • 2019.11.12 Tuesday
  • 14:38

 月子先生、ほんとにほんとに遅くなってしまってごめんなさい。「1歳児3対1と6対1の比較実験」の報告書を出すのが先で…というのは言い訳です。ごめんなさい。次はこっこ先生です。遅くなってごめんなさい。フジ先生、2016年のスレッドにコメント、ありがとうございます。おかげさまで今は、「何か事件や事故が起こるとまずはここのサイトに来る」という方も増えてきました。ありがたい限りです。

 

 さて、月子先生、どちらのお尋ねも、どうお返事しようかとけっこう悩みましたが…。2のほうは答えにもなっていません。ぜひ、皆さん、ご意見をください!

 

1)現場の保育者がいくら掛札の話を聞いても、施設長や保育所を管轄する課の職員が理解していないと、「ケガはダメ」「預かった状態のまま返すのが鉄則」のままで、状況は変わらない。

 

〔お答え〕
 はい、その通りです。ですから今はまず、「新卒や新しい保育士だけを対象にした研修会」は一切、お断りしています。「施設長や主任が聞くようにしてください」「課の人も呼んでください」と言うようにもしています。新しい職員が「そうなんだ…」と思って園に持って帰って、「うちは違う」「危ない」と思っても言えないし、つらくなるだけですから、と。もちろん、実際に肝心な人たちが来るかどうかは別ですし、そもそも安全に興味のない人ほど、「ケガはダメ」「預かったままの姿で…」をおっしゃるので…。掛札なりに努力はしています。まあ、私の話を聞いたからといって、「あんなのきれいごとだ」で終わらせる人はいると思います(←けっこう悲観的)。

 

 掛札がいくらお話をしても、実際には園に持って帰れるわけではない。なので、せっせと文章にしております…。園長や担当課の方が文章を読まない人だと、もうどうしようもないんですが。ケガに関しては、『ぜんほきょう』あたりに書いた文(1−8)であれば、「全保協のニュースレターに載ったものだから」というあたりで説得力が…ないんですよね…きっと(←ずいぶん悲観的)。

 

2)もうひとつのお尋ね。内容は要点だけにしてあります。
 ひとりで歩けるようになった1歳児が、床の上にも何もない、壁も棚も遠い所で、何も持っていない状態で、ただ歩いているだけで一人で転び、やわらかい床シートの敷いてある床に口をぶつけ、口内にケガをしました。これを「不適切な保育」と言われ、とにかくケガのないようにと言われました。「成長の機会を多少奪ってしまっても、とにかくケガをしないことが大切。口の中にケガしてばかりでは、保護者も安心して預けられないでしょう?」と。

 もちろん、歩いていたら壁や柵のそばで転んで激突しないよう、オモチャにつまずいて転ばないよう、オモチャを持って歩くことで余計なケガにならないよう、気をつけてはいます。何もない所で歩いている子は、多少距離をとって見守れるからこそ、ある程度は自由に歩かせられるのであり、絶対に、どこでも転ばないようにとなると、職員が2人(子どもは計6人)とも手のあいている時に一度に1人までしか歩かせることができません。ハイハイで顔をぶつけて唇をかんでしまうこともありえるので、ハイハイも制限しなくてはいけません。今、子どもたちは歩くのが何より楽しく、自宅ですら、オモチャより何より歩き回ってニコニコしているとノートに書いてあるような時期です。

 それでも、この子たちをひとりで歩かせることは不適切な保育なのでしょうか? 極力危険は取り除いていますが、床すら結果、ケガをしてしまうなら危険というなら本当に何もできないと思ってしまうのですが、それは私がうまく保育できていない未熟な保育士だからなのでしょうか?

 

〔お答え〕
 まぜ返すわけでもなんでもなく、人間が二本足で歩く以上、転ぶんです。おとなだって、もちろん歩き始めの子どもだって。『ぜんほきょう』に書いた通り、転ぶ、つまずくといったできごと自体が悪いわけではないし、二本足でうまく歩けるよう育てていくなら、こうしたできごとが起きないようにするわけにはいかないのです。「成長の機会を多少奪ってでも」というのはその通りで、歩かせなければ歩けるようにはならない(成長の機会を奪っている)、結果、歩けるようになるべき時期に歩くことを学びきれない、それでいいのか、という話ですよね。

 

 これを園長が保護者にきちんと話し、保護者の「家でも、ただただ歩いてニコニコしています」というノートに対し、「そうですよね。転びながら育っていくんですよね」と言えるのが当然なのですが…。それが先生の園ではできない、リーダー自身が「成長の機会を奪ってでも、ケガをさせるな」と言うと。

 

 ごめんなさい、なんと答えようかと考えていたのは事実です。答えの一つが『ぜんほきょう』の内容でもあります。でも、これ以上は何も言えません。言いようがないのです、そのような考え方をするリーダーをどう説得できるか…。

あとは、組合でこの話を挙げてみることでしょうか。「これでは保育士が働けないし、子どもも育たない」と、そちらで問題提起をしてみるというのはいかがでしょうか? 公立だから、異動を待つか…。

 

 皆さん、いかがでしょう? ぜひご意見、ご経験をお聞かせください。これ以上は私にはなんとも言いようがありません…。長時間保育、無償化、配置が少なすぎる、一方、「ケガすらさせるな」。親が子どもともっと時間を過ごせば、「ああ、子どもって転ぶんだ」「どこでも蚊に刺されるものなんだな」とわかるはずなのですが。今の子育てと保育は、悪循環の中にはまりこんでいると思います(←とても悲観的)。

 

掛札

跳び箱について

  • 2019.10.08 Tuesday
  • 22:25

 では、LISKO先生のお尋ねです。


 運動会での組体操の危険は少しずつ共通認識が出来てきたと思うのですが、飛び箱はどうでしょうか? そもそも子どもにとって、練習させられてできるようになることはすごいことではないです。危険が伴うことも頑張らせる保育に疑問を持つのは私だけでしょうか?

ーーー

 お答えというよりは、掛札の個人的意見ですが。

 

 跳び箱はじめ、「体育」と言われるものがすべて限りなく嫌いだった元・子どもとしては、「その通り!」と言いたいところですが、今の趣味が筋トレという私にとっては、悩むところでもあります…。

 

 まず。LISKO先生、ちょっと考えてみてください。組体操、鉄棒、雲梯、ジャングルジム、跳び箱は、それぞれリスクが違います。どう違いますか?

 

 

 


 組体操(人が積み重なるもの)は、下の人が巻き添えになるリスクがあります。他の4つには、まずそれがない(もちろん、遊ばせ方がへたなら誰でも巻き添えになりますが)。次。鉄棒、雲梯は、そこにつかまることができない子どもには、ほぼリスクがない。跳び箱も「跳ぶ」という行動の練習が必要。ジャングルジムは一段のぼれたら上まで行けてしまう。私は、組体操(巻き添え)、ジャングルジム(一段=一番上=落ちたら死ぬ可能性)は危険だと言います。でも、ジャングルジムも外側に子どもがいるぶんには、おとながつくことができる。鉄棒も雲梯もつくことができ、落ちそうならおとなが手を出せる。跳び箱は、練習中、横につくことはできるけれども、実際、「跳ぶ」となったら横についているわけにはいかない。だから、落ちる時は落ちる。鉄棒も雲梯も落ちる時は落ちるけれども、跳び箱と比べれば「横についている」ことができる可能性も高い。

 

 このように考えると、確かに跳び箱は危険です。じゃあ、跳び箱をやめるか。そうなったら、鉄棒も雲梯もやめるっていう話になっていくような気がします。運動嫌いだった元・子どもとしては、「跳び箱なんてないほうがいい!」と思いますが、指導者つきで筋トレをしていると、「あの時、教え方がもっとうまかったら、私も体育嫌いにならなかったかも」「私もできたかも」と思ったりもするのです。

 

 なにより、こちら(『ぜんほきょう』の記事)に書いた通り(「安全」6-1「コミュニケーション」のA-1にも別の見方で書いてありますが)、ケガの程度は、そこに至るできごとの良し悪しとはほぼ無関係なのです。ずっと、すいすい、跳び箱5段を跳べていた年長さんが、ある日、手をすべらせて落ちて骨折するかもしれない。一方、私は小学校でもぎりぎり4段しか跳べなかったへたくそだったけれども、体育でケガをしたことは一度もない。

 

 『ぜんほきょう』に書いた通り、人間、かすかな段差でつまずいて頭を打つことも、腕の骨を折ることもあるわけで、二本足で歩き、とんだりはねたりしている以上、ケガ自体を恐れていたら、どうしようもない。特に子どもは、です。

やりたくない子、できない子にむりやり活動をさせるのは危険ですし、本人が恐れているからリスクも上がるでしょう。でも、子どもの「やってみたい」「できるようになった」は大事じゃないかと。LISKO先生がおっしゃっている「頑張らせる保育」は、たぶん、「やりたくない子」「できない子」にむりやり…のほうをおっしゃっているのかなと思いますが。

 

 いかがでしょ?

2018年5月20日、東社協の研修会でお伝えした内容のリンク

  • 2018.05.20 Sunday
  • 16:27

東社協の今日の研修会では、どこかで掛札の話をすでに聞いた、という方が半数以上でありましたため、「子どものケガ、安全、保育の質」をつなぐお話をさせていただきました。本日、お話しした内容のリンクです。

 

1)子どもが「自分にできる」極限まで試し、「これはできない」「試してみよう」「頑張る」の間を行ったり来たりできる園庭のデザイン、それを見守るおとなについてまとめてある本は、『子どもが自ら育つ園庭整備: 挑戦も安心も大切にする保育へ』(木村、井上。ひとなる書房)です(タイトルで検索してください)。「こんな園庭、都会のど真ん中の園には無理」…それでも、内容はかなりな学びになります! 

 そして、こういう環境を都市でも作ることできるよう、そして、保護者が子どもと一緒に過ごし、保護者が子どもと一緒に遊び、保護者が自分の子どもの「できる」「できない」「今はこれがしたいんだ」「ケガをするんだ」「蚊にも刺されるんだ」…といったことを経験できるよう、子育てを保育園から少しでも手放していきましょう。保護者が子どもと過ごす時間が増え、保護者が子どもと一緒に活動する内容が増えれば、園と保護者の関係は間違いなく変わりますから。園が「抱え込み過ぎている」から、保護者もどんどん子育てから手を離している(離してきた)のだと思います。

 

2)上のような園庭や、園庭の活動はできなくても、生まれた時から体を育てることはとても大切。高山先生が書(描)いていらっしゃる「ひだまり通信」は、こちらの高山先生の部屋から…。園でも家庭でも役立つ内容です。

 保護者向け資料として使う時は、このまま、「高山静子(東洋大学)先生の『ひだまり通信』から」と隅に書いてお使いください(勝手に内容を変えてはダメです!)。「高山静子先生の資料」と書くことは、「園が言っていること」と思われない、客観性を担保する上でも重要です。もちろん、著作権上も。

 

・保育の専門性を高めるページ(ダウンロード用)➡保護者向けの通信(しつけ・遊び等)ダウンロード資料➡新生児訪問で配布するお便り他➡今日お話ししたのは2ページめ。

 赤ちゃんを上を向いて寝かせた状態で話しかけたり遊んだりする重要性(家でも保育園でも、抱っこばかりしていると、これができない)。

 

・保育の専門性を高めるページ(ダウンロード用)➡保護者向けの通信(しつけ・遊び等)ダウンロード資料➡ひだまり通信、遊び2➡今日お話ししたのは6ページめ。

 座らせておけば、動けず、また機嫌よく遊んでいるからと、ゼロ歳児をずっと座らせている(バンボであれ、床であれ)姿を園でもけっこう見ますが、これは体の発達上、問題。うつぶせにして、はいはいを促しましょう(うつぶせがダメなのは、眠っている時だけ! かん違いしないでください。赤ちゃんが目覚めている時はどんどんうつぶせにして、はいはいをできるようにしましょう。上を向けるのも、うつぶせにするのも、抱っこばかり座ってばかりの赤ちゃんはいやがるようですが、続けていけば慣れ、からだを動かすようになります…と保護者にも伝えてください)。

 

3)つかまり立ちで後ろにごっちん、というのは、そもそももっとはいはいを!という件は、上の高山先生の部屋から…。

 

保育の専門性を高めるページ(ブログ)➡2017年10月26日「つかまり立ちから後ろに倒れる」をお読みください。

 

4)掛札が2016年に話した「子どもにとってケガは大切」の当日資料と、その後に書いたまとめなどは、こちらのページの「子どもの遊びとリスク」から。

 

お迎え時間帯の安全について

  • 2016.10.18 Tuesday
  • 22:21

突然、腰痛!の掛札です。ぎっくりとこないよう、気をつけます。

 

さて、先日、お話を聞いてくださった方から次のような質問をいただきました。これは、どこの園でも起きていること…。皆さんがなさっている対策、お聞かせください! 

 

------ kasu 先生からいただいたご質問 -----

 

 講義大変参考にさせていただきました。特に、リスクと価値に対する天秤の話はわかりやすくそして、自分の保育を深く反省しました。自分の保育を見つめ直すきっかけにもなりました。ありがとうございました。
 私自身、今中堅保育士として勤めています。保護者対応など難しい場面が多いです。そこで質問です。
 お迎えに来て、園庭で遊んでいる子どもと話をしている保護者。保護者は話し込んでいて子どもを見ていません。早く帰ろうと子供に呼びかけてはいますが、保護者にはあまり強く言えないのが現状です。普段、話ができないからこそ、話をしたいのもわかるのですが、園内で行われ、何かあったらと思うとハラハラしてしまいます。何かいい解決策はありませんでしょうか??

かみつき、ひっかきのお返事

  • 2016.06.07 Tuesday
  • 18:11
エツコ先生、

ごめんなさい、遅くなりました。「かみつき、ひっかき」の所に書き込みました。ちょっと古い記事なので、ここにお知らせを。

http://hoikuanzen.jugem.jp/?eid=26#comments

かみつき、ひっかきの後の手当てについて

  • 2015.10.04 Sunday
  • 18:31
 かみつき、ひっかきの後の手当てについてですが、子どもの救急を専門にしている方から次のようなコメントをいただきました。

かみつきについては、噛み跡そのものが、内出血が原因のため、急性期にとにかく、患部をタオルの上から氷水で冷やすことが正解です。

「血流を促して回復につながる」と思われたのか、または、揉む行為が「圧迫処置」と混同されたのかわかりませんが、そういった理由で、揉む、暖めるは、よいとされた事実は(かつて)ありますが、今は悪化させる行為だという認識が必要です。

…ということです。皆さん、他にもコメントをお寄せくださいませ。
 

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