与薬について(抗生物質、アレルギー用薬等)

  • 2019.07.21 Sunday
  • 22:49

 まず「心配な保護者」さん、ありがとうございます! コメントを書きました(6月9日)。

 はまゆげ先生、考えてます。少々お時間をください。むちゃくちゃ難しいテーマだ…。

 

 さて、本題。

 与薬について研修会でお尋ねをいただきました。ネット上でいろいろ調べたうえで、並木由美江先生(全国保育園保健師看護師連絡会前会長、日赤幼児安全法指導員)にも確認しましたので、お返事します。

 お尋ねを要約すると… 「抗生物質の与薬は(与薬すると)決まったものだからいいのだけれども、アレルギー用の錠剤(レスタミン等)や点眼薬、点鼻薬は『症状に応じて』と言われるので断っている。それでよいか」。

ーーー

1)まず根本的な条件は、なんであれ「医師が処方し、投与を指示したもの」であること。

 

2)抗生物質に関して。抗生物質は抗菌薬であり、ウイルスが原因となる手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱/プール熱、RSウイルス感染症等には効きません。ですが、いまだ医師の中には、「かぜ=抗生物質」という人がいるのも事実です。

 一方、黄色ブドウ球菌(とびひ)や溶連菌などは、菌に合った抗生物質を決められた期間つかうことで効果が得られますが、耐性菌も増えてきているそうです。また、急性中耳炎の場合、耐性菌がすでにかなり蔓延しているそうです。つまり、菌感染よる疾患であっても、どの菌なのか、耐性菌かどうかを確認して抗生物質を投与しなければ。意味はないということになります(この内容を保護者、医師に伝えられるかどうかは別として、事実は以上の通りです)。

 

3)(菌が合っていて、効果がみこまれるという条件のもと、)抗生物質は確かに、投与すると決められた時間に投与するという点が明確です。では、「症状に応じて」という薬(例:食物アレルギー用の錠剤、点眼薬、点鼻薬)は投与・使用するべきではないのか。

 これもまた、今、掛札が研修会でお話ししている「価値とリスクを天秤にかける」です。以下の通りに考え、私も並木先生も、「(抗生物質は朝晩投与で断ったとしても)アレルギー用薬は投与・使用してよいし、すべき」と考えます。

 

・アレルギー用薬を投与・使用する価値:かゆみや発赤を軽減することができる。

・アレルギー用薬を投与・使用することに伴うリスク:副作用。投与・使用する子どもを誤るリスク。

・アレルギー用薬を投与・使用しない価値:「これくらいなら使わなくてよかったのに」と言われるリスクがない。

・アレルギー用薬を投与・使用しないことに伴うリスク:子どもがかきむしったり、こすったりして状態を悪化させる。

 

 子どもはかゆみを我慢できませんから、かゆければかきますし、こすります。その症状を緩和する目先の価値は、(おそらく抗生物質と比べても)大きく、使用しないことに伴うリスクも大きい。一方、医師に処方されている薬ですから、その子どもで深刻な副作用が出ないということはわかっているはずです。もちろん、眠気などの一般的な副作用はありますが、価値を考えれば受容することのできるリスクです。

 では、投与・使用する子どもを誤るリスクは? 医師でも看護師でも薬剤師でも調剤・投薬ミスはします。保育園の職員がミスをしないなどということはありえないと社会は理解すべきです。かつ、保育園で預かる薬は、万が一、投薬ミスがあっても危険が大きくないものであるはずです(誤って飲んだ子どもにとっても、結果的に投薬されなかった子どもにとっても)。

 

 よって、「症状に応じて」という条件下で預かるアレルギー薬は、「価値>>>リスク」です。

 

4)問題があるとすれば、アレルギー用の錠剤や点眼薬・点鼻薬を処方されている子どもがアナフィラキシー様の症状を呈した時に、「この子は薬を処方されているし、アナフィラキシーではないはずだ」と考えてしまうことでしょうか。

 これまでアナフィラキシーを起こしたことがない子どもでも、突然、アナフィラキシーを発症することはあります。ですから、症状が強かったり、口のまわりや呼吸に異常がみられたりした場合でエピペンがないという時には、すぐに搬送すべきです。

アレルギー用の錠剤等は症状の寛快までに時間がかかるものですから、アナフィラキシーの場合に使用するものではありません。

 

 今回は、特にアレルギー用の薬の話でしたが、以上のように理屈で考えてみればたいてい解決できると思います。

 

 近々、発熱などの体調不良時のコミュニケーションのポイントについても、サイトのほうに書きますね…。熱が何度ならお迎えを要請するのかとか、熱がなくてもとか、医者が「登園していいと言っているけど」…とか、いろいろありますので。

 

 

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